きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

バッハ無伴奏バイオリンソナタ第一番をちょっと分析してみる。

ではいよいよ無伴奏作品を実際に聴いてみます。

 

 

バッハ 無伴奏バイオリンソナタ第一番を聴く

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無伴奏バイオリンという曲はバイオリン弾きにとっては特別な曲で、バイオリンをやっている人なら誰でも憧れる(と思われる)のですが、

まあちょっと暗い深刻な雰囲気の曲が多くてとっつきにくいという人もいるかと思われます。

 

僕が無伴奏バイオリンの曲のうち初めて弾いたのがこの曲のアダージョ(一番初めの曲)で、

あれは・・・バイオリンを習い始めて3年か、4年目の人生二度目の発表会で、

ちょっと無謀ですが、暗譜して全部弾いたのだからよくやったなあとしみじみと思われます。

 

ちなみに初めての発表会で弾いたのはベートベンのロマンス(1番)という曲で、

う~ん、あれも無謀といえば無謀です。

 

僕の中には当初バイオリン発表会三カ年計画なるものがあって、

目下三回の発表会にそれぞれバッハ、モーツァルト、ベートーベンの曲をあてるというものでした。

バッハは最後に弾くつもりだったので、まずベートーベンを弾いたのですが、

色々あって(これが説明は面倒だが本当に複雑な色々があって)、

その後結局バッハを二年連続で弾くことになりました。

二度目に弾いたのがこの曲のアダージョで、その次の年はシャコンヌを弾きました。

 

モーツァルトを弾けなかったのは残念でしたが、

ロマンス、アダージョ、シャコンヌときたところをみると大変な上達ぶりで頑張ったなあという感じがします笑

 

僕の思い出話はこの辺で置いておいて、曲をみましょう

構成

構成は前の記事で見た通り以下です。

 

  1. アダージョ
  2. フーガ(アレグロ)
  3. シチリアーナ
  4. プレスト

 

僕の持っている楽譜(ペーターの原典版)で問題になっている所を参考にしつつ、どういう曲かみていきます。

 

これ↓


バッハ, J.S.:無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ BWV 1001-1006/原典版(Amazon)

 

 

第一楽章 アダージョ

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冒頭、重々しい和音から始まります。

楽譜をみてください。びっしり音が詰まっています。

この曲はいわゆる”譜割”が大変な曲で、僕も苦労した覚えがあります。

第一音目が四分音符ですが、その次が32分音符で64分も組み合わされます。

この曲は重々しいゆったりした曲なので、本当にむずかしい。

4拍子ですから四分音符をイチ、ニ、サン、シなどと数えていては曲になりません。

 

冒頭と同じように4分音符が現れるのは他に三か所あります。

特に冒頭含めて三度目の4分音符

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にはフェルマータがついて段落的役割を果たしています。

ここを中心として、後半に入るような感じがします。

 

 

 冒頭↓の蛍光ペンを弾いた箇所と同じ形が

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↓4度目の四分音符が出てきて直ぐに現れます。

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この二か所は直前に32分休符が置かれていて、何か訴えるような、説得力のある箇所です。

 

演奏で問題になりそうなのが

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後半のこの箇所で、

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原典にはありませんが、楽譜によってはこのようにD(レ)の音が入っていることがあります。

なぜ入るかというと、前半同じ形の箇所でこのように

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バスが、ソ、ファ、ミ、レ、ド、シ、と一つずつ下がっていますから、

 

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後半のこの個所でも、その形が想起されます。

少なくともバッハの頭のうちでは、バスがレ、ド、シ、ラ、ソと鳴っていたに違いない。

 

問題の箇所を実際に聴いてみるために、試験的にですが、音資料をつくってみました。


バッハ 無伴奏バイオリンソナタ第一番第一楽章 資料1

 

 

バッハの音楽ではこのように縦だけでなく横のつながりが重要ですから、こういう箇所は是非バスがなっているのを聴いてみてください。(こういうのが対位法の音楽)

第二楽章 フーガ

この楽章が問題のフーガですが、

まずフーガがどういうものであるか、理解する必要があります。

今までもなんとなく説明はしてきましたが、今回音資料という新たな手法をつかえるので、もう少しわかりやすく説明できるかと思います。

 

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冒頭です。

フーガではまず”主題”というものが、次々に投入されていきます。

ここでは、アルト(内声)、バス(音域的にはテノール)、ソプラノの順に入っていきます。

バッハの音楽では上に書いた通り、横のつながりが強いですから、それぞれの声部が、他に付随するのではなく、”独立している”ということを理解せねばなりません。

 

声部がどうなっているか、わかりやすいように音資料を作ってみました。


バッハ 無伴奏バイオリンソナタ第一番第二楽章 資料1

 

 

主題が提示され終ると、こういう箇所に入ります。

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これが前の記事で

dense counterpoint and refined harmony coupled with distinctive rhythms

と書いてあったのをみたような箇所で、

つまり、多声をあからさまに表す手法(重音)は使われていないが、音の中に多声的な動きがみられます。

 

以下、(特にバスを)強調して”かなり大袈裟に”弾いてみました。


バッハ 無伴奏バイオリンソナタ第一番第二楽章 資料2

多声だということがわかるように本当に大袈裟に弾いているので、実際はもっとなめらかに、

そして上の動画もそうですが、フーガはアレグロなので、もっと速く弾きます。

 

バッハの無伴奏曲ではこういう箇所がたまにあって問題になります。

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というのもバイオリンは(基本的に)同時に2つの音しか出せないので譜面どおり弾くことができないのです。

そういうわけで、いろいろな弾き方があります。

一番多いのが、おそらくリュート曲に従った(この曲はリュート用に編曲されている)、弾き方で、

ああ、これも録音すれば面白かったのですが、今は面倒なのでとりあえずやめておきます。

 

僕は三通りの弾き方を聴いたことがあります。

どんな風に弾かれているか注目してみてください。

 

 

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半ばこういう箇所がありますが、こういう同じ形が繰り返される場合、エコーといって一回目フォルテ(強く)、二回目ピアノ(弱く)で弾かれることが多いです。

ソナタの二番の最後の楽章は曲全部が、エコーで出来ているような曲で、絶妙な効果があります。

第三楽章 シチリアーナ

第三楽章は声部が完全に分かれている曲です。

下は冒頭ですが、

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黄の部分と上二声が別であることがよくわかります。

 

この曲は演奏上の問題もあるにはあるのですが、ちょっと専門的すぎるのでやめておきます。

綺麗な曲ですから素直に楽しみましょう。

第四楽章 プレスト

この楽章はとにかくほとばしる力と躍動感が魅力の曲ですが、

前に書いた主題の展開がみられます。

 

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これが冒頭ですが、後半の冒頭が↓

 

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ひっくり返っているのがわかりますか?

ジーグなんかではこういうつくりのものが多いというわけ。

 

この曲も重音は殆ど使われませんが、聴いていると対位法的手法が使われているのがわかります。

演奏を聴く

長ーい説明に疲れてきたところで演奏を聴いてみましょう。

演奏はグリュミオー。

楽譜つきですから上に書いたところを少し注意して聴いてみてください。

 


Bach - Violin Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001{Grumiaux}

 

 

 

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この箇所は動画の楽譜ではこの楽譜になっていますが、演奏ではDが弾かれていますね。

 

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ここは一番単純な弾き方。

うーん、ちょっと他に比べると効果が薄い気がしますね。

 

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この箇所はこの演奏ではエコーになっていません。

 

三楽章はちょっと速い演奏です。しかしまあ踊りの曲と考えるとこの位でちょうどよいのかもしれません。

 

 

 

というわけでやっと曲を聴くことができました。

疲れました笑

でもちゃんと読んでくれた方は楽しめたのではないでしょうか。

 

他の曲は・・・気が向いたら書きます。

いや、下積みは今までに完了したので、後は実際に聴くだけですから、適当につまんでみましょう。