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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

普通じゃないから面白い。変則的調弦”スコルダトゥーラ”の音楽を聴く。

fuchssama.hatenablog.com

前回、死の舞踏の話をしました。

上の記事に書いた通り、死の舞踏はソロヴァイオリンが「スコルダトゥーラ」で演奏します。

今回はスコルダトゥーラについて少し書きます。

 

スコルダトゥーラと名曲

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スコルダトゥーラとは何か

スコルダトゥーラというのは弦楽器が通常と違う調弦法を用いるもので、もともとリュートに多用されましたが、後にヴァイオリン属にも使われるようになります。

 スコルダトゥーラは、通常の調弦では得られない和音を得たり、演奏を容易にするために用いられます。

 

普通聴かれるものでスコルダトゥーラを使う曲は殆どありませんが、いくつか名曲があります。

スコルダトゥーラを使っているとわかって聴くとちょっと面白いです。

サンサーンス 死の舞踏

上の記事でも説明しましたが、もう少しわかりやすく書いてみます。

ヴァイオリンの調弦(通常)

通常、ヴァイオリンというのは高い方から

第一弦 E(エー)

第二弦 A(アー)

第三弦 D(デー)

第四弦 G(ゲー)

という並びになっています。

カッコ内は読み方で、これはドイツ読みですが、例えば第一弦のことは”E(エー)線”と呼びます。

死の舞踏の場合

死の舞踏の場合、ソロヴァイオリンはE線を半音下げてEs(エス、ミの♭)にします。

そうすると、A線との間に、通常完全五度のところ、減五度(増四度)ができます。

増四度の音程はヨーロッパでは”悪魔の音程”などと呼ばれていますから、それも意識しているのでしょう。もっとも増四度が問題になるのは旋律の場合ですが・・・

 

冒頭からソロ登場

前の記事に書いた通り、まずハープが12回レを鳴らします。(12時の意)

それから不気味なソロが登場します。

A(ラ)とEs(ミ♭)の音程を聴いてみてください。 

死の舞踏

死の舞踏

 

この後、ソロバイオリンが死の舞踏(ワルツ)を踊ります。

以下その部分

 

バッハ 無伴奏チェロ組曲第五番

無伴奏チェロ組曲のうちこの曲だけスコルダトゥーラが使われます。

 

無伴奏については以下参照

こんなに面白い曲はない・・・バッハの無伴奏作品を聴く - きつねの音楽話

チェロの調弦(通常)

第一弦 A

第二弦 D

第三弦 G

第四弦 C(ツェー)

無伴奏チェロ組曲第五番の場合

第一弦を一音下げてG(ゲー、ソ)にします。

この調弦によって通常の調弦では得られない和音を得ます。

ただし、この曲は、現代の演奏では、スコルダトゥーラを使わないで演奏することも多いです。

その場合、原曲通りには演奏できません。

 

この曲はアルマンドの前にフランス風序曲がつきます。

(アルマンド(組曲)についても上の記事から続く組曲の項を参照ください。)

 

前にも説明しましたが、

附点リズム(タン、タタン、タタンというリズム)の遅い部分のあと速いフーガが続きます。

 

プレリュード冒頭の部分

無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV.1011 : 1.Prelude

無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV.1011 : 1.Prelude

  • Alexander Kniazev
  • クラシック
  • ¥200

 

 

 クーラントは知的な面白い曲ですね

 

モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲

協奏曲というのはソロ楽器を複数持つ古典派の時代の形式です。

バロック期にも"コンチェルト・グロッソ”という形式があったことは、以前どこかで書いたと思われます。

 

この曲の場合、題の通りヴァイオリンとヴィオラがソロで、

ヴィオラにスコルダトゥーラが使われます。

ヴィオラ調弦(通常)

第一弦 A

第二弦 D

第三弦 G

第四弦 C

チェロと同じですが、チェロより1オクターブ高いです。

協奏交響曲(この曲)の場合

全ての弦を半音あげます。

 

演奏については、ちょっと難しいかもしれないですが一応説明します。

この曲は変ホ長調でソロヴァイオリンは通常の調弦でそのまま弾きます。

しかし、ヴィオラニ長調(の指使いとでもいえばよいか)で弾きます。

そうすると半音あげているので、実際は変ホ長調になります。

(二を半音あげたのが変ホです。)

 

弦は強く張れば張るほど、緊張感の強い、”張りのある”音がしますから、普通地味なヴィオラがヴァイオリンと貼り合いうるようになります。

この曲にはモーツァルトの当時の境遇が多いに関係しているようです。(省略)

 

弦楽器は古典派の時代に比べて通常の調弦自体が高くなっていますから、ヴィオラのスコルダトゥーラは当時より効果が薄いと思われます。

が、古楽復興により当時の効果が再現されるようになりました。

 

 寺神戸&クイケン古楽演奏

 

 

これ名盤(現代演奏)

 

 パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第一番

この曲も上の曲と同じで変ホ長調、バイオリンの弦を全て半音あげてニ長調の指使いで演奏します。

 

ですが、この曲は現代ではほとんどニ長調の曲として弾かれるようです。

 

 名手アッカルド

 

スコルダトゥーラの面白さ

変則的な調弦はその実際の効果以前に、”普通でない”というところに面白さがあります。

ヴィオラは音の地味な楽器ですが、それが華やかなヴァイオリンと渡りあう、それだけで面白いですよね。

この記事に登場した曲はどれも名曲ですから気になった方は聴いてみてください。

 

 

 

1991年パガニーニ国際コンクール優勝のクァルタは、パガニーニが実際使用していた楽器(ガルネリ「カノン砲」)を使って、”ホ長調”で録音しています。