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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

勉強の息抜きは”登山”がいいようだ。

例の台風が大雨を降らせて各地の川を氾濫させたころ、僕はある大きな川のある街へ遠出をした。

日も暮れるころ町について、川にかかった大きな橋を渡ると、その下にはごうごうと音を立てながら暗い色の水がふだんより大きく幅を広げて流れていた。

※この仰々しい始め方はしばらく更新のなかったことへの言い訳をするためです。

 

おすすめの息抜き法

台風が日本をさって間もなく、僕は旅先から帰って来た。

二週間ぶりに例の喫茶店に行くと、先生と一緒に山女さんが来ていた。

やまおんなさんというのは、ごくたまに登場する、いわゆるレアキャラで、これまでに何度か一緒に食事をしたことがあった。

 

山女さんはその名の通り、山と山のスポーツをこよなく愛する方で、

夏は日本各地の山に登り、冬はトレーニングと称してウィンタースポーツに取組んでいる。

その活動を表して、会うとだいたい山でつくった見た目の派手な怪我を負っている。

確か初めて会った時もじん帯を切っていた。

 

今でこそ一人前の山女になった山女さんだが、きけば彼女に始め山登りを仕込んだのは先生だそうで、というのも先生実は有名な山登りの弟子で、先生自身もよく山に登る。

山登りと学者というのは何か親密な関係にあるようだ。

 

一方僕は高校の時に試験の結果が悪かったからといって、補習に山に登らされたくらいで、ほとんど登ったことがない。

 インスタント山登り

山女さんは普段通り山に登る格好をしている。

先生はいつも通りだ。

少し話をしていると、やはり今日山に登るようである。

先生は、

これから〇山か△山に登るというのですが、一緒に登りませんか

という。

僕は全く普段通りの格好で、鞄には本が入っていて重いし、なんの準備もないのだが、面白そうだからついて行くことにした。

インスタント山登りである。先生は皮靴をはいている。

 

茶店を出る前、Tままさんがゆでたとうもろこしと南瓜と枝豆を持ってきてくれた。

先生は、では山頂でこれを食べましょう、といっていた。

登山道まで

駅から歩いて山に向かう。

僕の住む町は山から海へ向かってなだらかな坂になっているから、実際は登山道に入る前から山を登っている。

 

山女さんはさすがに力があって、前にずんずん歩いていく。

先生はパンをかじったり、草をつんだりしているから後に遅れている。

僕はその間を歩いていた。

 

その日は気温三十度を超えて、日が傾いてからもちょっと暑かった。

登る山は街中からもよくみえる山で、僕のバイオリンの先生がその山のふもと、というか中腹に住んでいたから、そこまでは毎週のように通っていた、が山頂に登ったことはなかった。

バイオリンの先生の家から目と鼻の先のところから、うすぐらい山道を行くと、登山道の入り口がある。

山頂まで

山女さんは入口のところで待っていた。

全員が到着するなり時間を確認して、記録している。

山登りというのは時間が重要な要素らしい。

その山は小さくて、入口からおよそ三十分程度で山頂につく。

 

さあ、といって山女さんは登りだした。

僕は山登りの勝手がわからないから、山女さんにぴったりくっついていく。

山を登ったことはないが、山を登るとき、身のこなし方、とくに足の使いかたが重要なことは知っていたから、山女さんの足の動きをよくみてついていく。

先生は後ろを一歩遅れて歩いている。

 

登って行くうち、僕はなんとなく眩暈のする気がして、普段の運動不足を反省していた。

それと夕暮れ時だからか蚊がすごい。

僕は何故だか知らないが蚊に好かれる。皆と一緒にいても僕だけが螫される。

数年前の夏に駒込六義園にいったとき、蚊が僕の血を求めて列を組んでいた。(誇張でない)

螫されると赤く10センチ位に腫れて猛烈に痒くなるから、なんとしても避けたい。僕は山を登っている間中ずっとハンカチを振りまわしていた。

 

山女さんは要所々々で立ち止まって時間と後ろを確認している。

先生はずっと後のほうにいて、姿が見えない。

日が暮れかかって暗くなってきたから、もたもたしていられない。

山女さんは先生に、声をかける。

 

先生は少しして追いつく。

もう82才だから体力が追い付かないのか、と思っていたのだが、少しひらけたところで後ろをみると、

草を摘んでいた。

山頂で

山頂につくころにはすっかり日が落ちていた。

山頂まえの東やで先生は必ず時間を記録するらしい。だいたい予定通りに進んでいる。

 

山頂から街を見下ろすと、信号のあかりが一斉に真っ赤に光っていた。あまり綺麗なものではない。

山女さんはカメラを持ってきていて、写真をとってくれた。

街を背景にしてとると、町の灯りがぼやりとうきあがって、三人の黒い影が不気味に伸びている。

夜だった。

 

下りは気温も下がって、心地よかった。

途中四人の登山者とすれ違ったが、皆完全に装備していた。

山女さんと僕と先生の組み合わせはさぞ異様に映っただろう・・・

山登りは体にも頭にもよい

下り終えるといつのまにか眩暈は消えて、むしろ意識がはっきりしていた。

山女さんは、さすがに片道何時間もかかるような山だと疲れるが、この位だとむしろ元気になる、といっていた。

本当だろうと思う。

 

上に書いたように学者で山に登る人は多く、体を動かすことで頭の働きもよくなるようである。

勉強しているとどうしても家に引きこもりがちになるけれど、息抜きもせずにずっと文字とにらめっこするよりは、散歩にでもいったほうが頭にも体にもよほどいい。

 

片道30分くらいなら難しくないし、いい趣味になりそうである。

ただ初心者が一人で、また初めての山を夜に登るのは危険なようだから、朝いくとよい。朝なら蚊もすくなかろ。

ちなみに山女さんは今回の山は50回くらい登ったそうである。そのくらいになると夜でも登れるようだ。

 

ハンカチをぶんぶんふり廻して山の蚊から血を死守した僕だけれど、

昨日枝豆を収穫していたら、庭の蚊に簡単に螫されてしまった。腫れている。