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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

ヘッセ作 春の嵐から「Nacht 夜」をドイツ語で読む

 前回の記事『他人の孤独は目にみえない 』でヘッセの「ゲルトルート(春の嵐)」に触れました。

その中に「夜」という詩があって、孤独にかかわるし、僕の好きな詩でもあるので紹介します。

 この詩はまえに『僕が「ロウソクの科学」を読んでから、ろうそくの灯りだけで暮らしていた話 』で触れたことがあったのですが、そのときは”ろうそく”とのかかわりでだしただけだったので、特に内容をみませんでした。

ヘッセの詩集についてもこの記事で紹介したので、ヘッセの詩が気になる方がいれば参考にしてください。

 

 

 Nachtをドイツ語で読む

(歌でもない)ドイツ語の詩を原文で読む機会なんてのはなかなかないでしょう。

ちゃんと読もうと思ったらもちろん色々勉強する必要があります。

でもまあ色々勉強しなくてもなんとなく「こんなものなんだなあ」と楽しむ程度でよいと思います。

それで奇跡的にドイツ語とかドイツの詩に興味がもてれば、その時色々勉強すればいいですよね。

ああ、とにかく難しいと思わないで、読んでみてということです。

NACHT ナハト 夜

 

Ich habe meine Kerze ausgelöscht;
イッヒ ハーベ マイネ ケルツェ アオスゲレッシュト

Zum offenen Fenster strömt die Nacht herein,
ツーム オフェネン フェンステル シュトレームト ディー ナハト ヘライン

Umarmt mich sanft und läßt mich ihren Freund
ウムアルムト ミッヒ サンフト ウント レスト ミッヒ イーレン フロイント

Und ihren Bruder sein.
ウント イーレン ブルーデル ザイン

 

Wir beide sind am selben Heimweh krank;
ヴィール バイデ ズィント アム セルベン ハイムヴェー クランク

Wir senden ahnungsvolle Träume aus
ヴィール ゼンデン アーヌングスフォッレ トロイメ アオス

Und reden flüsternd von der alten Zeit
ウント レーデン フリュステルント フォン デル アルテン ツァイト

In unsres Vaters Haus.
イン ウンスレス ファーテルス ハオス

 

Ich habe meine Kerze ausgelöscht;~

 

・Ich habe meine Kerze ausgelöscht;

mein(e) 英語my

Kerze ろうそく

ausgelöscht 不定形auslöschen (火などを)消す

ich habe~過去分詞(ここではausgelöscht) 現在完了の形で、私は~したの意

 

・Zum offenen Fenster strömt die Nacht herein,

offen(en) 英open 開いた

Fenster 窓

zum offenen Fenster で開いた窓を通っての意

strömt 不定形strömen 英stream 流れる

die Nacht 英night 夜

herein (外から)こちらの中へ

 

散文であれば

Die Nacht strömt zum offenen Fenster herein

となる。つまり夜が主語

 

・Umarmt mich sanft und läßt mich ihren Freund

umarmt 不定詞umarmen 抱く Armは腕 umは英(a)roundで周囲や回転等を表す

mich 私を

sanft 英soft,gentle 柔らかく、やさしく

und 英and

läßt mich 英let me わたしをして~せしめる

ihren Freund (夜の)友 ihr(en)は英herに相当 (ここはちょっと格が異常に思えますが、触れないことにします。僕の宿題です。)

 

・Und ihren Bruder sein.

Bruder 兄弟

sein 英語be ~である

Wir beide sind am selben Heimweh krank;~

 

・Wir beide sind am selben Heimweh krank;

 wir 英we 我々、わたしたち

beide 互いに wir beideで、ここでは”私”と”夜”のこと

sind 英語are seinの一人称複数形

selb(en) 同じき

Heimweh 英homesickness 郷愁、ホームシック

am selben Heimweh で同じい郷愁に

krank 病んでいる、病気の

 

・Wir senden ahnungsvolle Träume aus

senden~aus 不定形aussenden 放つ、送り出す 比喩的な使い方

ahnungsvoll(e) (いやな)予感にみちた

Ahnung 予感

Träume Traum トラオム 夢 の複数形

 

・Und reden flüsternd von der alten Zeit

reden von~ 不定形von~ reden ~について話す

flüsternd 不定形flüstern ささやく の現在分詞 ここでは話方をいっている

alt(en) 英old

Zeit 英time

 

・In unsres Vaters Haus.

in 英語in の中で

unsr(es) 我々の uns"e"resのeが音韻上の都合で省略されている。詩ではよくある。

Vater(s) 英father sがついて所有格 父親の

Haus 英house 家

ドイツ語では普通所有格の語が修飾する語の後にくるが、このように前にくることもある。

 我々の父親の家にて、というので、今実際その家にいて、redenするようにもとれそうですが、ちょっと繋がらないので、Zeitにつながっていると考えたほうがよいでしょう。

あとがき

日本語としてまとめませんでしたが、つながりが見えにくいところはどんなものかちょっと考えてみてください。

詩というのはおよそわかりにくいものですよね。

日本語訳の詩集を持っている方は合わせて読んでもいいと思います。

が、よくわからないのをあれこれ考えるのも詩の面白さでしょう。

 

Zum offenen Fenster strömt die Nacht herein,のところは詩的な表現ですが、情景はありありと思い浮かべることができます。

この詩ははっきりと孤独であるにかかわらず、それにしては寂しさや不安感が感じられないという、絶妙な”感じ”をもっているようです。

ヘッセの詩には夜を扱ったものが多いですが、この詩をみると”夜”というものをヘッセがどのように考え、感じていたかが感じられます。

 

”孤独”といえば、ヘッセの詩で一番に思い浮かぶものがあって、この記事の後半に書こうかとも思ったのですが、長くなりすぎるので次にまわします。