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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

クリスマスの歌「おお、もみの木よ」を聴く

12月も半ばに入ると段々とクリスマスが近づいてきて、キリスト教徒でもないのに不思議とうかれた気分になってきます。(コマーシャルにはめられている)

今回はクリスマス・ソングの定番のひとつ、「おお、もみの木よ」をドイツ語で聴いてみます。

 

「おお、もみの木よ」を聴く

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おお、もみの木よ(原題 O Tannenbaum)は、もともとクリスマスのための曲ではありませんが、もみの木がクリスマス・ツリーに使われることから、クリスマス・キャロルとしても親しまれています。

この曲の詩は「子供の不思議な角笛」にものっている16世紀以来の古い詩に基づいて、1820年にヨアヒム・アウグスト・ツァルナック(1777-1827)が書いたものです。

第一節は古い詩の形を継承しながらもみの緑の不変性を、第二節はそれと対比して不実な娘をうたっています。

その詩を18世紀から知られていた学生歌「うんざりするホラティウス」の旋律に当てはめました。

 

ところで今歌われている「おお、もみの木よ」はこのツァルナックのつくったものそのままではなく、1824年にエルンスト・アンシュッツ(1780-1861)が第一節をそのままに、第二節と第三節を新しく付け足したものです。

ドイツ語で聴いてみる


O Tannenbaum - Weihnachtslieder zum Mitsingen | Sing Kinderlieder

 こどもの声が入っているほうがクリスマスらしいですね。

歌詞&カタカナ読み

O Tannenbaum
オー タンネンバオム

 

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

wie treu sind deine Blätter!
ヴィー トロイ ズィント ダイネ ブレッテル

Du grünst nicht nur zur Sommerzeit,
ドゥー グリューンスト ニヒト ヌール ツール ゾンメルツァイト

nein, auch im Winter, wenn es schneit.
ナイン アオホ イム ヴィンテル ヴェン エス シュナイト

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

wie treu sind dene Blätter.

 

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

du kannst mir sehr gefallen.
ドゥー カンスト ミール ゼール ゲファッレン

Wie oft hat schon zur Weihnachtszeit
ヴィー オフト ハット ショーン ツール ヴァイナハツツァイト

ein Baum von dir mich hoch erfreut.
アイン バオム フォン ディール ミッヒ ホーホ エルフロイト

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

du kannst mir seht gefallen.

 

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

dein Kleid will mich was lehren:
ダイン クライト ヴィル ミッヒ ヴァス レーレン

Die Hoffnung und Beständigkeit
ディー ホフヌング ウント ベシュテンディヒカイト

gibt Trost und Kraft zu jeder Zeit.
ギープト トロースト ウント クラフト ツー イェーデル ツァイト

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

dein Kleid will mich was lehren.

歌詞は色々種類があるよう

歌詞はまあ色々とあるみたいで、上の動画でも最後が

dein Kleid will mich was lehren.

ではなく

das will dein Kleid mich lehren.

となっています。

うーん、これは何が違うか説明しにくいですが、最後の締めとしては下のほうがわかりやすいです。大差はありません。

他にも子供にわかりやすくしたと思われるものなどありましたが、気にするほどでもありません。

発音について

上に書いた発音が目安なのはもちろんですが、上の動画など現代風に歌っているものはカタカナからはちょっとかけ離れた発音になっている部分があります。

たとえばBlätter ブレッテルは動画ではどちらかというとブレッタァに近い発音になっています。

他にlehrenなどはレーレンというよりレーヘンにきこえます。

つまりカタカナの発音は少し古臭い発音なのですが、現代風の発音を日本人が安易に真似するとそれまたちょっと違うことになります。

つまりレーレンでは通じてもレーヘンでは通じません。

レーヘンのへはへに聴こえますが、実際は”へ”ではなく”レ(r)”だからです。

歌詞の意味

一節ごとに簡単に意味をとらえます。

第一節

wie treu sind deine Blätter

汝の葉はなんと誠実なるか

treu 誠実な ここではどちらかというと”信義のある”

sind は英語のare

Du grünst nicht nur zur Sommerzeit,

汝はただ夏に青いのではなく

grünst不定grünen 緑色である、青々している (乱暴な動詞ですね…)

nur 英語のonly

zeit 時

nein, auch im Winter, wenn es schneit.

否、雪の降る冬もまた(青い)、

auch 英語のalso もまた

wenn es schneit 雪の降る時

第二節

du kannst mir sehr gefallen.

汝は我が心に適う

とても気に入りました、ということ

mir gefallenで(主語が)私の気に入る

Wie oft hat schon zur Weihnachtszeit

もう幾度のクリスマス、

oft しばしば、度々

hat 現在完了を示す助動詞haben ここですでに完了していることがわかるわけ

schon もう、すでに

Weihnacht クリスマス weih(聖なる)Nacht(夜)

zeitがお尻にくっついているのは第一節でもそうだが音韻を揃えるため zeitは”時”

Ein Baum von dir mich hoch erfreut.

木たる汝が私を喜ばせたことか

ここは上の一行と繋がっている。

ein Baum 一本の木

hoch 高い ここでは程度が甚だしいことを表す

erfreut 不定詞erfreuen mich erfreuenで私を喜ばす

第三節

dein Kleid will mich was lehren:

 汝の衣は私にこう教える

Kleidは衣服

will 不定詞wollen ここでは(確信をもって)~だろうという意

mich was lehren 私に何かを教える こういう場合普通はesとかdasとかいうような気がしますが、wasとおいてその内容は以下に託されています。それを表して:(ドッペルプンクト)がついています。

〇〇を教える。とまずいってからその〇〇の内容を説明しています。このへんは日本語と大きく違いますね。

Die Hoffnung und Beständigkeit

希望なるもの、そして不変なるものは

〇〇というものは☓☓である、といういい方。どんなものかは次の行

gibt Trost und Kraft zu jeder Zeit.

慰めと力を何時も与える(、と)

Trostは慰めですが日本語でいう慰めとはちょっと違うでしょう。”期待”と捉えてもよいのかもしれません。

ツァルナックの詩

原詩はツァルナックの書いたものだと上に書きましたが、それがこのようなものです。

 

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

wie treu sind deine Blätter!

Du grünst nicht nur zur Sommerzeit,

nein, auch im Winter, wenn es schneit.

O Tannenbaum, o Tannenbaum,

wie treu sind dene Blätter.

 

O Mägdelein, o Mägdelein,

wie falsch ist dein Gemüte!

Du schwurst mir Treu in meinem Glück,

Nur arm bin ich, gehst du zurück.

O Mägdelein, o Mägdelein,

wie falsch ist dein Gemüte!

 

この二節は

 

おお、娘よ おお、娘よ

汝の心はなんと過つことか。

幸福のうちに誠実を誓ひけれど、

ただ我が貧しさゆゑに、掌返す。

おお、娘よ おお、娘よ

汝の心はなんと過つことか。

 

ぐらいの意味で、つまり振られた男の恨み歌なわけです。

こうなってくると、第一節も捉え方がかわってきて、詩の主点が第二節に移ってきます。

つまり、女ってものは移り気でなんて不実だろう、それに比べておお、もみの木よ、お前は何と誠実か。という意味になります。

これだと全然クリスマスにはふさわしくないですね(笑)

あとがき

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はじめのwie treuをwie grünなんと緑かに変えたものもありましたが、wie treuはツァルナックの原詩を引きずっているともいえるので、あるいはそちらのほうがクリスマスにはよいかもしれません。

ただアンシュッツの詩もクリスマス万歳の歌ではなくて、キリスト教徒の信仰の不変をうたったものでしょうから、べつにwie treuでもおかしくはありません。

キリスト教の信仰は日本人にはちょっと理解しがたいものですが、異文化に触れる機会だと思って歌を味わってみてください。

 

Tannenbaum

Tannenbaum

ウィーン少年合唱団のCDなんかで聴くととてもいいです。

ただ最近のCDにはあまり収録されないようです。