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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

都会人にこそ改めてみてほしい「アルプスの少女ハイジ」 僕とハイジの話

最近「ハイジ」の原作を読んでいた。

うまくドイツ語版が手に入ればよかったのだが、その前に英語版を手に入れたので英訳で読んだ。

パフィン版で300ページ位の結構長い話である。

 

 

 

ハイジのすすめ 僕とハイジの話

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普通ハイジといえば、例のアニメを思い浮かべるであろうが、もともとはヨーハンナ・シュピリというスイスの作家がドイツ語で書いたものである。

 

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ヨーハンナ・シュピリ

 

アニメのハイジはこの原作をもとに宮崎駿等がつくったもので、話の筋はおよそ同じだが、内容はかなり違ったものになっている。

ハイジとの出逢い

僕はおそらく殆どの人がそうであるようにアニメ版のハイジを”なんとなく”みたことがあった。

幼いころに見たものだから、話の筋は知っていたが細部はぼやけてよくわからなかった。

 

僕がいわば”ちゃんと”ハイジに向き合ったのは数年前、ドイツ語を始めた時である。

初級文法を一通り終えたところに、ある日先生が大きな絵本をもってやってきた。

それがハイジだった。

 

その絵本はドイツ語で書かれているが、これは結果わかったことだが、原作ではなく、日本版のアニメに基づいている

日本で作られたアニメはどうやら世界中で放送されているらしい。

 

その絵本はアニメのスト―リーがドイツ語で書かれているが、原作も参考にしているようである。

というのはドイツ語がスイスの方の方言で書かれていて、例えば動作の方向に関しては標準ドイツ語よりも厳密なところがある。

ハイジの舞台はスイスのグラオビュンデンという州にあるマイエンフェルトという街の近くである。

 

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グラオビュンデン(茶の部分)

 

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州の紋章

この動物(Steinbock、シュタインボック)はアニメ中何度か登場する。

 

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 Steinbock 直訳すると石山羊 Steinは英語のstone

原作のハイジとアニメのハイジ

僕はドイツ語の絵本、絵本と言っても殆ど文字で八十以上ページがあるものだから日本の絵本とは違うかもしれないが、それを読んで、アニメはどういうものなのか改めて気になって観ることにした。

 

アニメについては今さらいうこともないが、原作と比較するとちょっと面白い。

原作に関してはよくいわれるところであるが、キリスト教的要素が少し強い。

日本人はキリスト教等の宗教臭さが苦手だから、アニメ版ではその辺のことは殆どカットされているが、原作ではその要素が結構重要な役割を果たしているから、アニメ版ではそれが無いぶん他の要素で補っている。

 

宮崎駿は自分たちのつくったハイジについて「原作よりいい」というようなことをいったらしいが、強ち間違いではないかもしれない。特に日本人にとっては。

しかし僕が原作を読んだ限りでは、上に書いたとおり原作のハイジはキリスト教の要素が大きいから、そこをカットしたアニメ版は”よりいい”などという(比較の)表現では比べられえないのではないかとも感じた。

 まあなんといってもアニメは名作である。本当に涙がでてくるのだから面白い・・・ 

アニメ・ハイジの音楽

アニメのハイジの魅力のひとつに音楽がある。

特にオープニングの曲は有名ではないだろうか。

 

冒頭ホルンから始まるが、フルートやハープ等伴奏の楽器たちがなんとも気分を盛り上げてくれる。

おしえて

おしえて

 

それからエンディングの「まっててごらん」もいい曲で、僕の大好きな曲である。

まっててごらん

まっててごらん

 

 

両曲とも合間に独特な歌が入るが、これは地声と裏声を交互に出して歌われるJodel(ヨーデル)というアルプス辺発祥の歌唱である。

牧場で声をよく通すように発達したものらしい。

 

Le Vieux Guide

Le Vieux Guide

  • Jodel
  • ポップ
  • ¥200

 

 

 

ハイジには作中にも数多くの音楽が登場するが、その内にモーツァルトの「ディベルティメント」がある。

 

ディヴェルティメント ニ長調 K.136~第1楽章 アレグロ

ディヴェルティメント ニ長調 K.136~第1楽章 アレグロ

 

 

僕の印象に残っているのは、場面がフランクフルトに移ったときにかかる二楽章で、画面の雰囲気とよくあっていた。

 

ディヴェルティメント ニ長調 K.136~第2楽章 アンダンテ

ディヴェルティメント ニ長調 K.136~第2楽章 アンダンテ

 この演奏より遅くしっとりしていたように思われる。

ハイジの白パン

僕はハイジを読んでアニメを観て、ハイジの食べているものが気になっていた。

 

そこでちょっと気になったことがある。

数年前から色々なところで”ハイジの白パン”なるものをみかけるようになった。

 

僕は

ハイジの白パン????????

と思った。

 

ハイジが白パンを食べていたのはフランクフルトに滞在している間だけで、山にいるときは”黒パン”を食べている。

白パンはハイジが歯の悪いペーターのおばあさんのためにフランクフルトから持ちかえるという美談があるから、そこから独り歩きしてあたかもハイジが食べているおいしいパンのようになっているが実際は違う。

白パンは都会の高級品である。白パンを食べてもハイジの、山暮らしの気分は味わえないのである。

 

”ハイジの”とつけるのなら黒パンである。

  黒パンはもっと具体的にいうと”ライ麦”パンで、僕はこのライ麦パンというものが食べてみたかった。

 

僕がライ麦パンを気にするようになってどれほどたったか、割合すぐ見つけることができた。

近所のパン屋でライ麦パンを焼いていたのである。

僕の住んでいる地域ではライ麦パンを焼いている店はほとんどない。が、街なかのパン屋ではみかけることがある。

近くに適当なパン屋がない時はドイツから送ってもらうという手もあるようである。

 

その近所のパン屋は、ドイツのパンはドイツの粉で、フランスのパンはフランスの粉で焼き、使用している油脂はバター、オリーブオイル、ごま油等で、人口的につくられたものは使わないというこだわりの店である。

店は小さいが、味は非常によく、というのは味が良い意味で派手でなく、僕はその辺が素朴で、ドイツやスイスの雰囲気が感じられるようで気に入っている。

日本のパンは味付けが濃すぎたり、余計なものを入れ過ぎなことが多い。

 

ライ麦パンはライ麦の配合率で呼び名が変わるが、その店には大きく分けて三種類のライ麦パンがある。

ライ麦三割、五割(Weizenbrot、ヴァイツェンブロート、ヴァイツェンは小麦ブロートはパン)、八割(Roggenmischbrot、ロッゲンミッシュブロート、ロッゲンはライ麦、ミッシュはミックス)のものがある(残りは小麦)。それにキャラウェイシードというハーブが入っている。

 

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ロッゲンミッシュブロート

 

ライ麦九割から十割のものをRoggenbrot(ロッゲンブロート)というが、ライ麦が多いほど、ライ麦パン独特の酸味が強くなる。これは日本人受けしないから焼いていないのであろう。

ライ麦パンは初めて食べるとまずいものだが(もちろん人による)、食べているうちに不思議とおいしくなる。

僕はロッゲンブロートも好きである。

 

発酵バターや、庭でなった苺なんかをジャムにしてぬって食べると非常においしい。

サンドイッチにも合う。

とろーりチーズ

ハイジをみていて惹かれるのが、暖炉の火であぶったチーズである。

あれは調べてみると、知っている人も多いであろうが、ラクレットというチーズだということがわかった。

 

当時通っていた音楽教室の近くに輸入食品店があって、そこのチーズコーナーを覗いてみるとちゃんとスイス産のラクレットがあった。

 

こんな感じのものである

ハイジのチーズ(Amazon)

 

 

さっそく買って食べてみたが、食べたことのある人はわかるだろうが、あれは可なり強烈なにおいがする。

しかし味は非常においしい。

薄く切ったライ麦パンにはさんで食べると本当においしい。

あとヤギの乳があれば最高なのだが・・・

 

 僕が見つけたスイス産のチーズは他に

エメンタール

cotta エメンタール(Amazon)

 グリュイエールがある。

cotta グリュイエール(Amazon)

cottaは僕のよく買うメーカーで値段の割によい品質だと思う。

 両方ともラクレットと似た系統の味だが、においがラクレットに比べて少ないから、ラクレットのにおいが苦手な方は試してみるとよいかもしれない。

 

僕はハイジをきっかけにスイスだけでなくヨーロッパの主なチーズは殆ど食べてみた。

ハイジが教えてくれること

いや、こんなことここにわざわざ書く必要もないのだが、現代の、特に都会生活をしている人がハイジから学ぶことは非常に大きいと思われる。

児童文学は概して大人のための文学である。

 都会人が忘れている”あれこれ”を思い出させてくれるわけである。

 

しかし、ハイジはただ自然の中で自由に生きているだけでもない。

そこのところがまた面白いところである。

 

 

 

それでまあ、これだけ色々とあって最近原作を読んだわけである。

アニメの強烈な印象に影響されて、どうしても比較しながらしか読まれないが、そのうちにドイツ語でも読んで、原作の味わいをもう少し楽しみたい。