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原作「不思議の国のアリス」のすすめ

2016年4月2日投稿 12月2日改訂 2017年1月26日更新

 

不思議の国のアリスはディズニー映画によって有名で、

日本では、よくグッズなど売っているのをみますが、相当の人気があるようです。

また2010年、2016年には「アリスインワンダーランド」として映画化され話題になりました。

 

しかし、”アリスが好き”という人はたくさんいても、原作を読んだことがある人はそれに比べて少ない気がします。

映画もよいですが、原作も本当に素晴らしいものですから、

この記事では原作不思議の国のアリスについて紹介します。

原作アリスの紹介

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♠1, 著者はだれ?

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不思議の国のアリスを書いたのは、1832年イングランドに生れた、ルイス・キャロル (本名チャールズ・ドジソン)で、彼はオックスフォードを出た後、数学教師になりました。

数学者が書いただけあって、見る人が見ればアリスも数学的にみられるんだとか・・・

♥2, アリスが生まれた日

彼が所属したオックスフォードのクライスト・チャーチの学寮長、ヘンリー・リデルには三人の娘がいて、キャロルは姉妹と親しく、頻繁に遊びにでたそうです。

1862年の7月4日、キャロルは友人のダックワースとともに三人を誘い、大学の裏手にあるテムズ川のフォリィ橋というところからボートに乗ります。

不思議の国のアリス」の原作になった、”「地下の国のアリス」”は、そこで即興で語られました。

その風景は不思議の国のアリス冒頭に詩となってつづられています。

 

All in the golden afternoon

 Full leisurely we glide;

For both our oars' with little skill,

 By little arms are plied'

While little hands make vain pretence

 Our wanderings to guide. 

 

これがその詩の冒頭です。

全てが金色の午後・・・とはじまり幻想的なイメージが広がります。

 

物語をねだられたキャロルは、構想をどうしようか”苦しんで”、まず”とにかく(アリスを)うさぎの穴に落とし”、”それからどうするかは全く考えていなかった”とのちに語ったようです。

♣ 3, アリスのモデル

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アリス・プレザンス(当時八歳) この時アリスは面白がって乞食に扮している。

 

アリスというのは三姉妹の次女の名前です。

長女はロリーナ、三女はイーディス。

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実はロリーナとイーディスも、女王の下、かつらをつけて法衣をまとった緋インコのローリィとその隣の隣に座っている小鷲イーグレとして登場します。

一緒にボートに乗ったダックワースも女王の隣にアヒルとして登場しています。

 

アリスの世界はこのようにキャロルの身の回りの人物や、クライストチャーチの所々がモチーフになっています。

♦4, 「不思議の国のアリス」の続編

不思議の国のアリスには続編があります。その名も「鏡の国のアリス」。

実はディズニー映画は不思議の国のアリス鏡の国のアリスがごちゃまぜになっています。

例えばトウィ―ドル・ディーとトウィードル・ダムの双子は原作の不思議の国のアリスにはでてきません。

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ここで二つの話のあらすじと魅力的なキャラクター(一部)を紹介します。

♠5, 「不思議の国のアリス」のあらすじ&キャラクター

ある日、川べりで本を読む姉の横で退屈していたアリス。暑さにぼうっとしていると、目の前をうさぎがかけていきます。

たいへんだ、間に合わない。

うさぎを追いかけたアリスは生垣の下のあなに飛び込み、不思議の国へ迷い込みます。

 

うさぎを追いかけてたどり着いた部屋の穴から見える美しい庭にでるということがアリスの目標になり、一応それを中心に話が進みます。

それから、(トランプの)ハートの女王が話の筋をつくる重要な役割をもっています。

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ハートの女王とアリス

 

以下不思議の国のアリスの個性的なキャラクターを、一部ですが、紹介します。

ドードー

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ドードーというのは18世紀まで、モーリシャス諸島に生存していた、つまり本当にいた鳥です。

天敵がいない環境で翼が退化し、さらに人に対する警戒心もなかったため、大航海時代に食料目的でとられ、あっというまに絶滅しました。

どもる癖のあったキャロルはこの鳥と自分を重ねていたようです。

チシャ猫(チェシャ猫)

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にやにやした顔で出たり消えたりする神出鬼没の不思議な猫ですが、名前の由来はよくわかっていないようです。

当時「チシャ猫のように笑う」という言葉があったそうですが、あるいはそれからきているのかもしれません。

気違い帽子屋(マッドハッター)&三月うさぎ&ヤマネ(ネムリネズミ)

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狂ったお茶会(マッドティーパーティー)にでてくるキャラクターです。

マッドハッターは当時オクスフォードの近くにシルクハットをいつも身につけている家具屋がモデルらしい。その家具屋はいつもおかしなおものを発明していたといいます。

三月うさぎというのは、うさぎは三月に”発情”するもので、”さかりのついたうさぎ”という意味。

ヤマネは英語でdormouseですが、これが直訳だと”ネムリネズミ”になるわけです。

(フランス語でdormirは眠る)

キツツキのようなものですね。(英語でもwoodpecker)

グリフォンとモックタートル

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グリフォンは鷲と獅子のキメラで、権威・権力の象徴です。

モックタートルは牛の頭をもった海ガメで、当時海ガメのスープというのが高級品として扱われていましたが、子牛のスープを偽って海ガメのスープとして出す店があり、そのいんちきの象徴であるわけです。

というわけで権力といんちきが面をむかう場面なのです。

♥6, 「鏡の国のアリス」のあらすじ&キャラクター

愛猫のダイナの子、スノードロップとお話するアリス。話は暖炉の上にある鏡に向かいます。鏡の国はどんなところか?暖炉の上にあがったアリスは銀色のもやのような鏡を通り抜けて鏡の国へはいって行きます。

  

鏡の国のアリスボードゲームのチェスの盤上で話が進み、構成もチェスのルールにのっとっています。これがやや難しいところ。

登場人物もチェスに関わりのあるものがあります。

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白の女王とアリスと赤の女王(女王=チェスのクイーン)

 

鏡の国のほうも少しだけキャラクターを紹介します。

羊(オールドシープズショップ)

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年をとった羊(一度に十四もの編み針を操る)が店番をしている雑貨屋が登場しますが、これも実際にあったもので、なんと今もその店は残っています。

ハンプティ・ダンプティ

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この卵のような形の化けものはマザーグースに登場するもの。

それはこんな詩です。

 

Humpty Dumpty sat on a wall;

Humpty Dumpty had a great fall;

All the king's horses, and all the king's men,

Couldn't put Humpty together again.

had a great fallってのが笑っちゃうんですが、どんな落ち方をしたんでしょうね。

 ライオンとユニコーン

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オックスフォードの学寮の紋章のなかに描かれていて、それがモデルになっています。

 

”アリス”はどちらかというと、いわゆるストーリーの重要な作品ではありません。

それよりも個々の特徴あるキャラクターと出来事、話の中に細かにちりばめられた”ユーモア”を楽しむものと思われます。

もともとアリス達姉妹のためにつくったものですから、ライオンとユニコーン他彼らにしかわからない”ネタ”が色々とあります。

こんな風に個々の登場人物や場所に注目してみるとより面白くなるかもしれません。

♣7, 挿絵は色んな種類がある

不思議の国のアリスのために、多くの絵描きが挿絵を描いています。

一番有名なのは出版された当初つけられたジョン・テニエルのものです。

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テニエルのうさぎ 

 

これまで載せてきたのはすべてテニエルのものです。

最近では日本人の手によるものも多く、いくつかの出版社はそれを挿絵として採用しています。

 

この記事で挿絵が魅力的なアリスの本をまとめてみました。

fuchssama.hatenablog.com

 

他に“ダリ”や”ローランサン”など超一流の画家もアリスの挿絵を描いています。

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ダリのアリス

 

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ローランサンのアリス

♦8, おすすめの翻訳

翻訳も本当に何人もの方がしていて、これほど多人数に訳される作品もなかなかないのではないでしょうか。挿絵の多さにしても、アリスの魅力を物語っています。

翻訳が多いとどれにしようか迷ってしまう人もおおいでしょうから、あくまで僕の意見ですが、おすすめの翻訳を紹介します。

 

僕はアリスが好きで色々な翻訳を読みました。

アリスは訳者によってかなり雰囲気が変わる本で、中には現代口語風の軽いものもあるのですが、僕はあんまり軽すぎるとよくないと思います。

高杉一郎さん訳

僕のおすすめは講談社高杉一郎さんの訳です。

が、文庫は今絶版のようです。

 青い鳥文庫では出版されていますが、新装版になって挿絵がテニエルから山本容子さんのものに変わりました。児童むけなので漢字にふりがながついています。

鏡の国のアリスのほうにはチェスの簡単な説明があります。

 

 河合祥一郎さん訳

 テニエルの挿絵では角川から文庫が出ています。

角川は以前岡田忠軒さんの訳で出ていましたが、新訳になりました。

この新訳は結構評判がいいようです。

生野幸吉さん訳

児童向けには青い鳥文庫もよいですが、

活字が大きくて読みやすいので、福音館のものもおすすめ。

老眼の方にもおすすめです笑

 

挿絵は本当にたくさんの種類があるので、色々な版をみてみると面白いです。

♠9, アリスを英語で読む

アリスは言葉遊びが非常に多く、翻訳家を悩ませる作品です。

英語が読めるのなら、原作そのままの、英語で読むとよいと思います。

子供向けの本なので英語の勉強にも非常に良いです。

 不思議の国のアリス」原作の冒頭

(この前に詩があります)

Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do: once or twice she had peeped into the book her sister was reading, but it had no pictures or conversations in it, "and what is the use of a book," thought Alice, "without pictures or conversations?"

鏡の国のアリス」原作の冒頭

One thing was certain, that the white kitten had had nothing to do with it: ―it

was the black kitten's fault entirely. For the white kitten had been having its face washed by the old cat for the last quarter of an hour (and bearing it pretty well, considering); so you see that it couldn't have had any hand in the mischief.

 

ペンギンから不思議の国と鏡の国を1冊に合わせたものが出版されています。

 僕はこの本を妹にプレゼントしましたが、それをきかっけにアリスを好きになったようです。

 

また講談社英語文庫から注付きのものも出ています。

 僕ははじめこれで読みました。

 

 

 また英語で読む時の参考書に以下の本もあります。

やや説教くさい内容ですが、読むときに役に立ちます。

 おわりに

僕は映画のアリスも好きですが、原作にしかない面白みというのがやはりあると思います。ユーモアと言葉遊びあふれる文章は映画では味わえません。

原作を読んだことが無い方はこの機に是非読んで、不思議の国を楽しんでみてください。

 

 

 読書の参考に以下の記事もごらんください。

fuchssama.hatenablog.com