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きつねの音楽話

老人性古本症候群を患った若者の徘徊ブログ

”ソナタ形式”がわかればクラシック音楽は格段に面白くなる!(ソナタ形式の解説)

 

fuchssama.hatenablog.com

 前にこの記事で、クラシック音楽を聴くときに注目すべきことをいくらか紹介しました。

この記事では主に曲の内部の構造、言い換えれば和声や細かい技法について書きましたが、曲にはもう少し離れて遠目で見た時にみえる外側の構造、つまり”形式”というものがあります。

 

ただなんの知識もなくクラシック音楽を聴くと、その長さと耳慣れなさに尻込みしてしまいますが、形式のことを少し頭に入れると、聴いているときに迷子にならず、曲がずっと面白くなります

 

クラシック音楽の中心となる古典派の時代(バッハ以後、18世紀後半から19世紀初めハイドン、モーツァルト、ベートーベンの時代)では、ソナタ形式というものが完成されて曲の重要な要素になりました。

もちろん他の形式(ロンドー形式等)もありますが、クラシック音楽を聴く際に一番目にし、問題になるのがこのソナタ形式で、これを理解すればクラシック音楽をより楽しむことができます。

 

ソナタ形式はよく登場する分よく説明されもしますが、大体簡潔な説明しかされずきちんと把握するのはなかなか難しいと思われます。

そこで今回はこの”ソナタ形式”について、図や実際の曲をみながら、やや詳しく、しかしなるべくわかりやすいように説明します。

 

 

ソナタ形式の解説

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 ソナタ形式は、交響曲やソナタの主要な楽章に用いられたもので、大きな規模が特徴です。

大体が曲の頭、第一楽章におかれますが、他の楽章におかれることもあります。

内容はこれからみますが、非常に知的で抜け目のない(つまり完成された)ものです。

 ソナタ形式の基本構造

 まず次の図を見てください。

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図の一行目はソナタ形式の基本的な構造を表しています。(矢印→は時間経過を表す)

つまり、ソナタ形式は

  1. 提示部
  2. 展開部
  3. 再現部

という三つの部分からなります。

 ※この複数の部分からなるという構造がクラシック音楽全般において重要なこと

※上図はあくまで基本的な構造で例外もある。例えば”展開部を欠く”もの、”第一主題の再現を欠く”もの等。

1, 提示部(Exposition)

提示部というのは、主題(テーマ)が提示される部分という意味。

主題というのは、概念的なので説明が難しいですが、曲をかたちづくる上で重要な楽想のことです。とりあえず簡単に”重要なメロディー”と考えればよいと思います。

 

例えば有名なベートーベンの交響曲第5番「運命」の主題

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 頭に思い浮かばない人はちょっと聴いてみてください。

交響曲第5番 ハ短調 作品67 『運命』 第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ

交響曲第5番 ハ短調 作品67 『運命』 第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ

  • ヘルベルト・フォン・カラヤン & フィルハーモニア管弦楽団
  • クラシック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 ※iTunesは▶で試聴できます。

 

聴いてみると、どうだ!といわんばかりに”提示”していることがわかります。

まあここまで大胆な提示はなかなか無いですが・・・

 

提示部では主題の提示とは別に他の要素も含まれ得ます。

2, 展開部(Durchführung)

提示部で提示された主題が、展開される部分という意味ですが、この展開というのがちょっと複雑です。

専門的にいえば、「主題や動機的要素を用いて主題操作(主題労作)を行う」というのですが、これは実際にあたらないとわからないと思います。

 

「動機」というのは”モティーフ(モチーフ)”のことで、これまたひどく概念的な用語なのですが、音楽的に性格のはっきりしたまとまりある最小の単位のこと。

上の運命でいえば、これは極端な例で、動機がそのまま主題になってしまっているといえます。

この場合、「ん(休符)タタタ|タ」というリズムが一番の要になっています。(音楽的に、というのは様々な事柄を含む)

 

「主題操作」というのは、主題や動機をさまざまに発展させることをいいます。

文字だけでは伝わらないでしょうから、後に示す実例で詳しくみます。

3, 再現部(Reprise)

再現部は提示部で提示された主題が再現される部分を意味します。

提示部で提示された主題は、展開部でいってみればその(はっきりとした)形を失うわけです。

それが再現部で”再現”されます。

再現というわけですから、主題は提示部のときとおよそ同じ形で現れます。

 

しかし、形は同じでも、全くそのまま再現されるわけではありません

これが、提示部の主題の提示のされ方と合わせて、ソナタ形式の注目すべき部分です。

それについては以下に書きます。

二つの主題

 上の図にあったように、提示部で提示される主題には”第一主題”と“第二主題”のふたつがあります。

これは曲の”調性”というものと大きな関わりがあります。

調性というのはみなさん聴いたことがあると思いますが、〇〇長調とか☓☓短調とかのあれです。

調性(Tonalität)

クラシック(古典)で使われる調には12長調、12短調合わせて24の調があって、曲はそのうち一つの調を選んでかかれます。

 

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wikipediaより

 

この図は「五度圏(Quintenzirkel)」というもので24の調全てを表しています。

 

その選ばれた調に対して、他の調は何らかの関係にあります。

 あまり深くは触れませんが、この図でみて距離が近ければ近いほど、調的な関係も近いといえます。

 

具体的にいえば、両隣までの長短調は”近親調”というもので、名前のとおり近い関係にあります。

例えばハ長調の場合は両隣の長調、ヘとト、またそれらの内側にある短調、ニ、イ、ホ、が近親調です。

主題の調

まあそれで何がいいたいのかというと、

ある調に対して一番関係の深い調は、図でいうと時計回りで一つ隣の調になります。

例えばハ長調ならト長調

 

そしてここが重要ですが、

提示部において、

第一主題は選ばれた調、主調といいますが、それで奏されて、

第二主題は時計回りで一つ隣の調、属調、で奏されます。

 

つまりこのようになります。

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みてもらうとわかると思いますが、提示部では上に書いた通り、

主調→属調

になっていますが、再現部では変わって、

主調→主調

になっています。

 

これがソナタ形式の特徴です。

※今説明したのは主調が長調の場合で、主調が短調のときはちょっと具合が違います。

調が変わるとなにが変わるの?

これはちょっと難しい話です。

ですが、ただ聴いているだけでも提示部第二主題に移ったときに、雰囲気が変わったな、というのは感じられると思います。

そして、再現部でまた第二主題が現れたときに提示部と違う現れ方をすることもわかると思います。

 

少し詳しい話をすれば、曲は主調の時もっとも安定した状態にあるのですが、それが属調になると不安定になります。

つまり提示部では

主調(安定)→属調(不安定)

となるわけです。

それが展開部でさらに、転調(調がかわること)して不安定になります。

それが再現部で主調にもどって、先に不安定だった第二主題も安定の主調・・・

というわけです。

 

しかしまあこれは理論的な話で、曲の内容によってもちろん様々な場合があります。

そして、聴く人によっても受取り方は異なるだろうと思います。

ソナタ形式の構造の”益”を大きく受取られる人もいれば、全く感応しないという人もいるでしょう。訓練にもよりますが。

ソナタ形式の実例

ここからは以上で説明したことを踏まえて実際にソナタ形式の曲にあたります。

大きい曲はソナタ形式を骨組みに拡大していったもので構造を把握しにくいので、小さな曲をみます。

実例1:クーラウ作曲ソナチネOp.55,No.2から第一楽章

クーラウは1786年に生れて1832年に亡くなっていますから、だいたいベートーベンと同じ世代です。

とりあえず聴いてみましょう。

1:48までが第一楽章


Friedrich Kuhlau: Sonatina in G Major Opus 55 No. 2

 

提示部

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これが提示部の楽譜です。

・ソナタ形式の演奏について

上の演奏では繰り返されて2回演奏されています。

ソナタ形式では前半部分(提示部)と後半部分(展開部+再現部)がそれぞれ繰り返されることがあります。

演奏者によってことなりますがこの演奏のように、

提示部→提示部→展開部+再現部(終り)

という演奏が多いと思われます。

逆に後半だけ繰り返されるということはおそらくありません。

 

 

第一主題は楽譜ニ行目の一小節目までです。

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この曲はト長調ですから始めト長調で書かれています。

画像バス(黄の部分)をみると”ソ=ト”になっているのがわかります。

注:バスがソだからといって必ずト長調になるわけではありません。

 

そしてその後すぐ第二主題が始まります。

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今度はバスが”レ=ニ”になっています。

つまりここからニ長調に転調したわけです。

判断の決め手はメロディ上のド♯で、このおとはト長調の音階にありません。

展開部

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これが展開部です。

展開部は上に”主題操作”がされると書きましたがここで主題操作がされています。

 

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この黄をつけた部分を見てください。

それから提示部をもう一度みましょう。

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黄をつけた部分が同じ形をしているのがわかりますか。

つまりこれが”モティーフ”で、このモティーフをもとに展開部で”主題操作”が行われたというわけです。

再現部

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第一主題がかえってきたのがわかります。

しかし後半形がかわって、長くなっていますね。

 

そして第二主題ですが、このようにト長調(主調)にかわっています。

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まとめ

これでおよそソナタ形式を把握できたかと思われます。

まとめるとこのようになります。

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上に見たような小さい曲では展開部の作りが簡単ですが、大きい曲になると何度も転調する長く複雑なものになります。

 

おまけですが、短調の曲では第二主題が平行調(Ⅲ)になる場合が多いです。

平行調と言うのは五度圏でくっついている長調、または短調のことで、

たとえばハ短調ならハ長調のことです。

また属調の場合もあります。

 

今回は小規模のソナタ形式をみましたが、そのうちもっと大きな規模のソナタ形式をみようと思います。

紹介した内容をしっかり踏まえておけば構造についておおよその分析ができると思われます。

構造を把握できたらより細かい要素について注目するともっと音楽が面白くなります。

ソナタ形式をとっている曲は有名な曲のうちにも多いですから、これを参考にして聴いてみてください。

 

全く知識がないと難しいかもしれませんが、この本は今回紹介したような楽式(形式)を学ぶのによいと思います。

 


和声と楽式のアナリーゼ(Amazon)

 

こういう専門的なことに限らず、作曲家の伝記を読むとか音楽史を読んでみるとかそれだけでも面白くなると思います。

 僕としては音楽も学べば学ぶほど面白くなると思うので、興味のある人は是非色々勉強してみてください。

では今回はこのへんで、さようなら。

 

 

・ 続き↓ 大規模のソナタ形式についての記事

fuchssama.hatenablog.com