キャラクターグッズだけじゃない?日本語と英語で読む原作ムーミンの世界
2016年4月18日投稿 2017年1月26日更新
ムーミンは日本ではアニメとして知られていますね。
最近になってまたムーミン人気に火がついたようで、特にキャラクターグッズはあちこちでみかけるようになりました。
前に不思議の国のアリスのことを書きましたが、ムーミンの原作も知らない方が多いのではないでしょうか。
原作ムーミンのすすめ
ムーミン谷へ
森と湖の国フィンランドから
ムーミンはスウェーデン系フィンランド人の作家、トーベ・ヤンソン(1914-2001)が書いたもので、もとはスウェーデン語で書かれた童話です。
日本ではキャラクターだけが独り歩きしていますが、実は原作がとても面白い。
2014年はトーベ・ヤンソン生誕100年で大いに沸きました。
ムーミン童話
ムーミンの童話は全部で9巻あります。
日本では講談社が版権を持っているようで、保存版、文庫版、児童向けの青い鳥文庫で出版されています。
以下各巻を紹介します。
小さなトロールと大きな洪水
※画像はAmazonから(以下同様)
1945年に出版されたムーミンシリーズの第一作目。
その後出版されず、長い間幻の作品でしたが、近年出版されるようになりました。
夏の終りころ、小さなムーミン親子が暗い巨大な森を歩いています。冬になる前に家を建てなくちゃならない・・・
出版された年代をみてもわかりますが、戦争の影響が色濃く出た作品。
ムーミン谷の彗星
第二作
ムーミン谷に不思議な模様が現れます。なにかが危ないことがおきる・・・
ムーミンとスニフはそれをつきとめるため旅にでます。
わくわくする話。
この作品だけ2回改訂されていて、文庫本ででているのは一番新しいもの。
改訂される前のものは 前作と繋がりが強い。
たのしいムーミン一家
第三作
冬眠から目覚めたその日(ムーミンは冬眠します)ムーミン、スニフ、スナフキンが山の上で帽子を見つけます。なんとその帽子は鬼の帽子だった?
ムーミンが世にでるきっかけになったもので日本でもこれが一番最初に出版されました。
おそらくこどもでも楽しめる話
ムーミンパパの思い出
第四作
ムーミンパパは自分の若いころの冒険を本に書くことに決めます。
孤児だった幼いころ、仲間との出逢い・・・パパはムーミン、スニフ、スナフキンをあいてに物語ります。
基本的にパパの本の内容で、時々現実(ムーミン谷)に場面が移るという珍しいスタイルです。
ムーミン谷の夏祭り
第五作
洪水がやってきた、ムーミンたちはやむなくムーミン谷を後にします。
ムーミンたちはちょうど流れて来た劇場に住むことに。
シェイクスピアを意識した題
ムーミン谷の冬
第六作
厳しい冬の真っただ中、まだ春が来ていないのにムーミンだけ冬眠から目覚めてしまいます。ムーミンの初めて知る冬の世界。
この作品から外面的なことより精神的な要素が強くなります。
ムーミン谷の仲間たち
第七作
ムーミン谷に住む仲間たちを主人公にした短編集。
挿絵の雰囲気と相まって独特。
ムーミンパパ海へ行く
第八作
冒険好きのパパはムーミン谷の平和な暮らしがもの足らない。
ある日一家は海を渡って灯台のある小島に移り住みます。
ムーミン谷の十一月
第九作
ムーミン一家がいない?
物語としては最後の作品
おそらく一番精神性の強いもの
英語版にも Possibly the cleverest of the Moomin booksという評がある。
文庫も青い鳥文庫も最近新装版になって表紙が変わりました。
絵本と漫画
他に絵本、弟のラルスとともにイギリスの夕刊に連載した漫画があります。
僕とムーミンの出合い
僕がムーミンを読むようになったきっかけは先生に勧められたことで、
先生はある日丸善のワゴンセールで英語のムーミンを偶然手に取ったそう。
その時読んだのは最後の作品「ムーミン谷の十一月」だったらしいのですが、あまりに面白いので数冊買って友人にも渡したとか。
それまでは子供向けのものとして気にしていなかったようです。
童話・・・?
確かにムーミンは挿絵もあって、愛らしいキャラクターがたくさんでてくるので、児童向けとしてもよいのですが、作を重ねるごとに段々と、特に冬以降、思想的な色が濃くなってきているので大人も十分に楽しめます。というか別に童話と考えなくてよいと思います。
冨原眞弓さんの功績
最近ムーミン関連のものだけでなくトーベ・ヤンソンの他の作品の邦訳が出版されていますが、その翻訳をしているのが冨原眞弓さんです。
冨原さんはトーベ・ヤンソン本人と交流のあった人です。
もともとフランスの大学院でフランス哲学を専攻していたそうですが、89年にストックホルムの書店で偶然仏語版と英語版のムーミンを手にとり(僕の先生の境遇と似ていて面白い)、たちまちムーミンの魅力にとりつかれ、トーベ・ヤンソンと連絡をとり、大人向けの著作を邦訳したいと申し出たそう。
その時スウェーデン語を一語も知らなかったというのですから相当の熱意です。
ムーミン童話では第一作の「小さなトロールと大きな洪水」が冨原さん訳です。
またムーミン関連の著作が多数あります。
英語で読むムーミン
日本語で読むのももちろんよいのですが、スウェーデン語はゲルマン語で英語やドイツ語に近いので、英語で読むとより面白いと思います。
僕も始め大半を英語で読みました。
講談社英語文庫
講談社英語文庫に彗星と楽しいムーミン一家が入っています。(日本語の注付き)
どちらかというと楽しいムーミン一家の方がやさしいと思われます。
彗星の方は旅の途中の風景描写が多く、凝った表現がみられます。
PUFFIN BOOKS
パフィンはイギリスの出版社PENGUIN BOOKSの子会社で児童書出版の大手
鳥(パフィン)のマークが目印
SQUARE FISH (FSG)
アメリカの出版社
最近大きい書店でよく売っているのをみるのがここのもの
比べてもらえばわかると思いますがどういう経緯か、パフィンと装丁が殆ど変わらない。
ただスクウェアフィッシュの方がやや版が大きめ
彗星の翻訳はElizabeth Portchで講談社英語文庫も同じ翻訳。ただ内容は一番新しい改訂版ではなくその一つ前のもの。読み比べると面白い。
FSG
アメリカの出版社 表紙の感じがよい
puffinも昔の版の方が趣がある。
SORT OF BOOKS
洪水の話は近年になって復刊したので、大手ではおそらく手に入らない。
僕がムーミンを始めて呼んだのがこのソートオブの洪水の話
A4くらいの大きい本で、絵も大きく印刷されていて絵本という感じ。
最近は英訳以外にも独訳等も書店でみられるようになりました。
僕はARENAの彗星の独訳をもっています。
どれから読む?
ムーミン童話は出版のややこしい歴史もあって作品の順番がわかりにくいですが、僕が紹介した順が原作出版の順です。
僕は古い物から順番に読みましたが、必ずしもそうする必要はないかとも思われます。
ムーミンシリーズは各話に繋がりがあるところと、ないところがあって、普通の連作ものと違って話の筋がしっかりあるわけではありません。
ですから、例えば童話として子供に与えるのに洪水の話をいきなり読ませるよりは、楽しいムーミン一家等の方が適切かと思われます。
キャラクターは一応作ごとに増えていくのですが、話をまたぐと全く状態が変ります。
ムーミンママ、ムーミントロール、スニフ、ムーミンパパは第一作からでています。
スナフキン、スノークのお嬢さん、スノークは彗星から、ミムラやリトル・ミィはパパの思い出からですが、例えば、海へ行くではパパ、ママ、ムーミントロール、ミィしかムーミン谷の仲間はでてきません。
というわけでムーミンシリーズは話の筋を追うものではないので、別に順に読む必要もないか、と思われるわけです。
全部読むなら始めから読むのもいいかもしれません。
それから、古い物ではムーミンが日本人の普通知っている姿ではありませんので驚くかもしれません。ムーミンの顔から飛び出したあれはもともと”鼻”なのですが、そのうち口の位置が移動して段々犬とか馬とそんな顔つきになりよく知られているムーミンになります。
キャラクターグッズが人気でムーミンがいたるところでみられるのは嬉しいのですが、日本ではキャラクターが独り歩きして原作の雰囲気とかなりかわったものになっています。絵柄もトーベ・ヤンソンのものは独特のペン遣いで、味のあるものなのですが、グッズではアニメ的ものが多く面白みが少ないです。
是非原作を読んで本物のムーミン谷を味わいましょう!