僕が普段やっている小説を読みながら日本語の語彙を増やす方法
2016年3月23日投稿 2017年1月27日更新
日常のあらゆる場面で必要なのが言葉によるコミュニケーションですが、そこで力を発揮するのが”語彙”です。語彙力はまた読解力にも直結します。ところが語彙力はそう簡単につくものではありません。
しかし、日常の読書の時間にちょっと注意すれば確実に語彙を増やすことができます。
はじめに注意しておきますが、これはまっとうなやり方で、努力もしていないのにどんどん語彙が増えていく、とかそういうミラクルな方法ではありません。
ただし、僕が実践している方法は、おそらく誰もが思いつくであろうけれども、実際にやっている人は皆無であろうというものですから、参考になればと思います。
語彙を増やす方法
必要なもの
- 本(なんでもよいが、小説など)
- メモ帳(紙切れ)
- ペン
- 辞書
- やる気
1、本を読む
最初はとにかく本を読まねば始まりません。
なんでもよいですから、読みたいものを読む。ただし、語彙力の強化という点でみればあまり易しいものは適していません。
本を読んでいると、知らない言葉、もしくはいい回しがでてくる。
重要なのは、少しでも疑問に思う表現を逃さないことです。
母国語である日本語を読んでいるときは、わからない言葉がでてきても文脈で意味を想像したりしてやり過ごしてしまいがちですが、それは厳禁です。
2、メモする
とにかくわからない言葉がでてきたら、メモします。
その本を読んでいる間は、そのメモしたメモ紙を”しおり”にします。
わからない言葉が出てくるたびに調べてもよいのですが、あんまり立ち止まっていると読書の勢いがついていかないので、話の筋を追うことができていれば、その場ではメモするにとどめます。
重要なことではないかもしれませんが、メモはペンでしたほうがよいです。
鉛筆等だとすれて紙面をよごすことがあります。
3、辞書を引く
本を読み終わったらいよいよ意味を調べます。
僕が普段使っている国語辞典は、
の3つです。
広辞苑は僕が使っているのは第五版が主で、二版を使うときもあります。最近新しく第六版が出版されました。
ビジュアル大辞典は知らない人もいるかもしれませんが、写真や絵がたくさんのっていて、見やすい辞典です。絵が無いとダメな人におすすめ。
大辞林は僕が使っているのは初版ですが今は第三版がでています。
僕は広辞苑を一番よく使いますが、どれもよい辞典です。
必要があれば漢語辞典で漢字を調べます。
僕が良く使うのは
で、今出版されているのは第二版です。
つかいやすい漢語辞典だと思います。
電子辞書はだめなのか
僕は別に電子辞書をどうこういうつもりはないのですが、たとえ紙の辞書と電子辞書で内容が同じであっても、そこから得るものは違うのではないかと考えています。つまり、画面やら、紙面に字がどのようにあるか、ということが大切だと思われるのです。
最近は本の中にも”つるつる印刷”(これは僕が勝手に命名したものですが)が、おおくなってきています。つるつるの紙につるつるの印刷。
紙面と目線の摩擦なんてものはありませんが、実際そういうものがあると考えて差し支えない。古い活版の立派に印刷されたものは、やはり読んだ感触が違うものです。
というわけで僕は紙辞書をおすすめしますが、時間が限られているとかなにか理由があって紙辞書よりも電子辞書のほうがよいという方もいるでしょう。
電子辞書は手軽に使えて持ち運びもできるというので、紙辞書にないよさもありますからそちらのほうがよいという人はそれでよいと思います。
上に紹介した広辞苑、大辞林はApp Storeでも販売しています。
4、覚える
上は実際に僕が書いたものですが、これはメモしていた単語、漢字を辞書で調べてみやすいように書きだしたものです。
ここまですれば、覚えようと思わなくとも半分覚えたようなものですが、僕は完全に消化したいときはこれをトイレにおきます。
そしてトイレに行くたびにこのメモをちらちらみる。
みては忘れ、忘れてはみる。そうするうちに覚えられるわけです。
単語を書いたものを眺めるだけなら、辞書をかたっぱしから読めばいいじゃないか、といわれそうですが、大切なのは自分が読んだ本の中の言葉だということです。
単語だけみても全然覚えられないものが、
ああ、この言葉はこんな場面ででてきたんだよなあ
と思い返すだけで、簡単に覚えられてしまうものです。
なんなら単語だけでなく文章ごと書きだすのもよいでしょう。
単語単体ではなく、文章のなかで覚える
これは語学の鉄則ではないでしょうか。
語彙が増えれば、コミュニケーションに役立つばかりでなく、読める本の幅も広がります。本を読むときだけではなく、気になる言葉があったらすぐにメモすることが大切だと僕は思います。
これを機にみなさんもメモ習慣を始めてはいかがでしょうか。
語彙を増やすのにおすすめの本
これまで語彙を増やす方法を書いてきましたが、ここからは語彙を増やすのにおすすめの本を紹介します。
実際ある程度しっかりした内容をもっているものであれば、なにを読んでも足しにはなるでしょうが、一応参考にあげます。
読書関連の記事
読書になれない人は以下の記事を参考にしてみてください。
◆読書に慣れていない人が知っておいた方がよい本のこと(出版社、版型)のことをまとめました。
◆本を読みなれていない人は児童小説から読み始めるとよいと思います。
明治文学
現代の言葉につながるものとして、明治文学ほど我々の言語に有益なものはないでしょう。
ただ単に語彙という点だけでなく、言葉づかい等、言葉全体の勉強になります。
夏目漱石のもの
漱石の文は非常に立派なものでありながら、感触としては重くなく心地よいものがあります。
「吾輩は猫である」は、非常に面白い話ですが、使われている言葉は立派で難しいものです。
青い鳥文庫のものは註がついていますから、勉強にはよいと思われます。
森鷗外のもの
鷗外は漱石とともに「高踏派」などと呼ばれて、明治文学の二大巨匠とされていますが、評価されているだけあって立派なものです。
僕としては語彙というより”文体”のほうに目を向けてしまいますが、語彙強化にももちろん役に立つと思われます。
鷗外というと何よりも「舞姫 」が有名ですが、舞姫は文語で書かれているので、慣れていない人にはおすすめしません。
雁は口語で書かれた中編小説で、内容も重たくありません。
その他
他にも明治の文豪はたくさんいますが、どれを読んでもいいでしょう。
口語文の先駆をなしたのが、二葉亭四迷ですから、「浮雲」などは読んで損はないと思います。
浮雲についてはこの記事で書きました。
詩集を読むのもよいでしょうが、語彙という点からみれば、詩よりは小説のほうがあっていると思います。
漢文
現代において教養的単語として使われているものは、というかそれに限らずとも、中国由来のもの、つまり漢文と呼ばれているものからとられたものが相当あります。
音読みで使われている漢字(漢語または和語以外)はすべて中国の言葉です。
最近は漢文をほとんど読まなくなっていますが、日本語の語彙には大量に漢語が入っていますから、これを学ばずにおくことはできません。
語彙を増やしたいのなら、日本の古典文学とともに、漢文を読まねばなりません。
漢文を学ぶに当たっては、ふつう”漢詩”にまず親しみます。
さしあたりは唐詩(杜甫や李白等)のものを読むのがいいと思います。
有名なものでは例えば
「春眠暁を覚えず」(孟浩然)
「白髪三千丈」(李白)
など普段耳にするものがたくさんあります。
馴染みのない人は例えばこういう参考書からはいるのがおすすめです。
おわりに
語彙は単語だけ覚えればいいというわけではありません。
英単語だけ覚えても英語がわからないように、単語だけつめこんでもどうしようもありません。
語彙を増やすには幅広く、相当の量をこなさなければなりません。
塵も積もれば山となるわけですから、地道にがんばりましょう。